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2017年8月 日本毒性学会第44回学術年会報告

(2017年8月14日)

日本毒性学会第44回学術年会(2017年7月10~12日)において下記の研究報告を行いました。

「長さの違いによる単層カーボンナノチューブの慢性呼吸器毒性の比較」

発表者:藤田 克英、納屋 聖人、竹原 広、片浦 弘道、江馬 眞、本田 一匡(公益財団法人食品農医薬品安全性評価センター)

単層カーボンナノチューブ(CNT)の平均長が異なる分散液をF344雄性ラットの気管内に単回投与し、投与後104週までの慢性呼吸器毒性を比較しました。長尺CNTの大部分は細気管支部で沈着し炎症性変化を起こすのに対し、短尺CNTは相当量が肺胞まで到達し持続的炎症を引き起こすことが分かりました。これらの結果は、肺への障害性は単層CNTの長さに依存して強くなるのではないことを示しており、本研究開始時点で唱えられていた「長いCNTが危ない」という単純な繊維病原性仮説は、単層CNTにおいては成立しないと考えます。また、投与後26週の肺細胞を用いてin vivoコメット試験を実施したところ、各CNT投与群に% tail DNAの増加は認められず、肺に対する遺伝毒性を示さないことが示唆されました。

しかしながら、短尺で見られた持続的な炎症や、長尺で見られた気管支での炎症には十分注意するべきです。難溶性かつ難分解性の物質がクリアランスしきれないほど大量に肺内に取り込まれると、持続的な炎症に至る可能性があるため、単層CNTも大量に吸入しないよう適切な暴露管理が必要と考えます。

本発表の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「低炭素化社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」の結果から得られたものです。

来年の第45回年会は、大阪国際会議場(グランキューブ大阪)での開催が予定されています(2018年7月18日から20日まで)。

(文責:藤田克英)