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2018年3月 毒性学会(SOT)第57回年会報告

(2018年3月30日)

毒性学会(SOT第57回年会が、2018年3月11日から15日まで、米国サンアントニオで開催されました。SOTは、シンポジウムやポスター発表、展示会を中心に、例年3月に年会が開催され、毒性学に携わる各国の企業、大学、研究機関、政府の関係者が多数集います。

Nanotoxicologyに関する口頭発表のセクションは、ワークショップ2課題(Assessing the Dose of Particles in Toxicological Studies: Advances in Dosimetry Models for In Vitro and In Vivo Applications in Light of Risk Assessment、Nanotoxicology, State of the Science, and the Path Forward)、シンポジウム2課題(Alternative Testing Strategies for Nanomaterials and Ultrafine Particles、In Vitro Test Methods to Model Local Respiratory Effects after Exposure to Pulmonary Toxicants: Not Just Smoke and Mirrors)でした。昨年の第56回年会では、ワークショップ1課題のみでしたので、発表数が増加したことになります。Schubauer-Berigan(米国国立労働安全衛生研究所: NIOSH)による工業ナノ材料によるヒト疫学研究(State of the Science: Human Health Effects of Engineered Nanomaterials)に関する研究発表は興味深いものでした。カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーに従事する作業者において、顕著な健康影響は比較的少ないことを見出しました。また、これまでいくつかの毒性研究報告では、炎症性やいくつかのバイオマーカーは工業ナノ材料曝露に関連するとしているが、疫学調査では特定の所見は集団間で一貫性がなかったというものです。

ポスターセッションでは、ナノ粒子で3課題(暴露方法と安全規制、毒性メカニズム、プロテインコロナ)、ナノ毒性で4課題(免疫、インビトロ、インビボ、吸入)の発表がありました。昨年に比べて課題数は増えていますが、発表件数はほぼ同等の印象です。インビトロ培養細胞試験では、Kisin(米国国立労働安全衛生研究所: NIOSH)(Toxicity Responses of Various Fibrillar and Crystalline Nanocellulose Materials: Differences and Similarities)のナノセルロース粒子のサイズや形状が毒性を決定するのに重要であり、ナノフィブリル化セルロース(NCF)とセルロースナノクリスタル(CNC)では、肺胞上皮細胞において明らかに異なるパターンの毒性および炎症反応を誘導するという報告がありました。

産総研、TASCでの研究成果(Cytotoxicity and mutagenicity of exfoliated graphene)をポスター発表しました。本研究は、剥離グラフェン(TASC)を、ラットマクロファージ(NR8383)に24時間暴露し、生存率や生体内活性酸素種の産生、炎症性サイトカイン産生、網羅的遺伝子発現、および細胞内への取り込み形態を観察したものです。この結果、剥離グラフェンの暴露濃度に依存して生存率の低下や炎症性サイトカインの産生、細胞内への取り込みが観察された一方、生体内活性酸素種の産生や変異原性は認められなかったことを明らかにし、より詳細な吸入影響評価には動物試験が必要であることを報告しました。

来年の第58回年会は、Maryland州Baltimoreでの開催が予定されています(2019年3月10日から14日まで)。

会場となったHenry B. González Convention Center

会場付近のSan Antonio River Walk

(文責:藤田克英)