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2011年1月 欧州EFSAによるナノ食品のリスク評価ガイダンス案

<背景と対象>
2011年1月14日、欧州食品安全機関(EFSA)から「食品/飼料へのナノ科学とナノテク応用から生ずる可能性のあるリスクに関するリスク評価ガイダンス」と題する草稿がパブリックコンサルテーションにかけられ、2月25日に締め切られた。早ければ6月までに最終版がリリースされることになる。

この背景には、欧州議会で審議中の新規食品規制改正案がある。現在、欧州委員会、欧州理事会、欧州議会の三者で調整中であるが、もし成立したら、新規食品(1997年5月以前に欧州で食経験がないもの)については、ナノスケールの原料を用いた食品には特別なリスク評価は要求される(事実上のモラトリアムになる)とともに、成分名のあとにカッコ付きで「ナノ」と表示することが義務付けられる。

本ガイダンスの対象は、1)ヒトや動物が食するもの、2)植物生産のための使用される農薬、3)食品や飼料に接触する製品に組み込まれたもの、の3ジャンルとされている。また、天然の成分は、意図的に使用されたり、ナノスケール特性を出すように加工されたり、生体活性成分をカプセルに包んだりするのでなければ、対象外。環境経由や労働者曝露も対象外。

ナノスケールの定義については、欧州委員会が提案中の定義案(個数濃度で1%以上が1~100nmに該当)などを引用しつつも、「このガイダンスではどんな定義もしない」と書かれている。ただし、「本ガイダンスでは、SCENIHRが示唆した用語と定義が使用される」という記述も見られるので注意が必要である。科学委員会(SCENIHR)が2010年に出した報告書では個数濃度で0.15%以上が1~100nmという定義を提案している。

<リスク評価のポイント>
基本的な考え方は、すべでのナノ食品は、①in vitroの遺伝毒性試験、②ADME(吸収・分配・代謝・排泄)試験、③げっ歯類での90日間反復投与毒性試験、の3点セットを実施して、非ナノ形状との同一性評価を行い、差があると見なされれば、さらなる有害性試験を実施するというものである。明示的には書かれていないが、非ナノ形状のものでこれらのデータが無い場合は、非ナノ形状のものも対照として実験が必要になるだろう。「さらなる有害性試験」としては、in vitro消化試験、その他のin vitro試験、生殖毒性試験、発達毒性試験、in vivo遺伝毒性試験、慢性影響/発がん性試験、特定の毒性試験、が挙げられている(草稿のTable 2)。

リスク評価のフロー図は図1に示したとおりである。最初に物理化学的特性のキャラクタリゼーションを行い、ナノ材料に該当するかどうか判断し、該当するようならば、曝露シナリオを作成する。曝露が無いというエビデンスがあれば免除される。その上で、非ナノ形状のものが食品/飼料としてすでに認可されているかどうか判断する。認可されている場合でも、分野ごとのEFSAガイダンスに基づいた試験が行われていなければ、認可されていない場合と同様の対応が必要になる。この場合、通常の分野ごとのEFSAガイダンスと本ガイダンスの要求する試験を実施しなければならない。これらの結果と、別途実施する曝露評価の結果を合わせてリスクキャラクタリゼーションとなる。

<ガイダンス運営上の課題>
課題は数多くあり、そのあたりがパブリックコメントとして提出されることが予想される。まず、食品中あるいは動物体内でナノ材料を検出および定量化するための技術は十分でない。そのため、必須とされている3点セットのうちの、ADME試験のフィージビリティは危うい。また、食品/飼料中にナノの状態で含まれているか観察することが困難なため、成分がナノであれば、食品/飼料中、さらには体内でもナノスケールであると仮定せざるをえない。また、ナノの規制上での定義(粒径分布の何%か、指標は個数か質量か)もまだ定まっておらず、定まったとしてもその計測手法が確立していない可能性が高い。

EUEFSA
図1: 人工ナノ材料のリスク評価のための概略図