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2010年11月 欧州RoHS指令改正案が欧州議会で決着

<要点>
11月24日、欧州議会本会議で投票が行われ、RoHS指令改正案は賛成640票、反対3票、棄権12票で可決した(欧州議会のリリース欧州委員会のリリース)。理事会での承認がやや遅れているものの、2011年3月頃に理事会で承認されたのち、EUのOfficial Journalに4月頃に掲載される予定である。2010年6月2日に欧州議会の環境公衆衛生食品安全委員会(ENVI)で可決された改正案では、制限物質リストに「銀ナノ粒子」および「長い多層カーボンナノチューブ」が加えられ、上限濃度が「検出限界値」とされ、事実上の使用禁止が提案されていた。また、安全性データの議会への提出やラベリングの要求も含まれていた。欧州議会の本会議で可決された案では、これらナノ材料に関する条項はほとんど削除された。ただし、ナノ材料を含めた制限物質リストを3年以内に見直すよう求める文言が入った。そのため、今後も注視する必要がある。

<経緯>
RoHS指令とは「電気電子機器における特定有害物質の使用制限に関する欧州議会及び理事会指令」で、2003年に成立した際には、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDEの6物質が禁止された(のちにそれぞれに最大濃度値が設定される)ことで注目を浴びた。この指令は2006年7月1日から施行された。今回の改正に至る経緯を振り返ってみよう。

RoHS指令の改正は、2008年12月に欧州委員会が最初の案を公表した。もともと第4条に列挙されていた6つの禁止物質は附属書IVに移り、これに加えて附属書IIIに「ヒトと環境に許容できないリスクが懸念される評価対象物質(優先物質)」として、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCCD)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジブチル(DBP)の4物質が挙げられた。これは将来の附属書IV物質候補という位置づけである。

これに対して、2010年6月2日に欧州議会の環境公衆衛生食品安全委員会(ENVI)で可決された改正案にはナノ材料が大きく取り上げた。ナノ材料の定義は「意図して製造された1つ以上の次元が100nm程度以下。ナノスケールとしての特性を持つならそれ以上の大きさの構造物、一次&二次凝集体も含む。」とされ、第5a条には次のようなラベリングや安全性評価に関する文言が並んだ。

1.電子電気機器(EEE)へのナノ材料の使用と、ライフサイクル全体におけるヒト健康と環境に対する安全性についてのすべての関連データを、欧州委員会に知らせるべき。 2.欧州委員会はそれらのデータをもとに安全性を評価し、議会と理事会に報告すべき。必要ならばその後のリスク管理についての法制化につなげる。
3.消費者曝露につながりうるナノ材料を含むEEEにラベルすべき。
4.欧州委員会はナノ材料の特定と検出のための標準を作成すべき。
5.欧州委員会はラベリング要求の適用のための詳細なルールを作成すべき。

また、附属書IIIの優先物質リストは欧州委員会案の4物質から37物質に拡大された。そして附属書IVには当初からの6物質に加えて、「銀ナノ粒子 (検出限界値)」および「長い多層カーボンナノチューブ(検出限界値)」が加えられた。その理由として次のように書かれていた。

銀ナノはすでにEEEにおいて、例えば携帯電話のコーティングなどに抗菌剤として使用されている。また、洗濯機から放出されている。そういった用途以外でも、銀ナノはヒト健康や環境を危険にさらしている。カーボンナノチューブもEEEにおいて使用されているかもしれない。しかし、それがアスベスト様の特性を持ちうることが示されている。英国の環境汚染についての王立委員会、英国の健康安全委員会(HSE)やドイツの環境庁といった権威ある機関がこれらのナノ材料について懸念を表明し、それらの使用に反対する勧告さえしている。

「長い多層カーボンナノチューブ」の「長い」の定義は明示されていないが、2008年に出たPoland et al. (2008)を根拠にした、いわゆる「繊維仮説」に基づいていることは明らかである。マウスの腹腔内に長さの異なるカーボンナノチューブやアスベスト繊維などを投与し、1日後と7日後に解剖した結果、長い繊維にのみ炎症反応(多核白血球、タンパクの浸出)が見られた。この場合の「長い」はおよそ15μmとされ、この理由としてマクロファージの貪食能を超えるからであるという仮説が提唱されている。

<最終案の中身>
附属書IVの禁止物質は6物質のままであり、「銀ナノ粒子」および「長い多層カーボンナノチューブ」は削除された。ナノ材料についての安全性データ提供やラベリングについての文言も削除された。また、附属書IIIの優先物質もゼロになった。しかし、欧州委員会が2008年12月に附属書IIIに挙げた4物質は、前文(7)に列挙され、それらから生じるヒト健康や環境へのリスクは「優先的に考慮されるべき」と書かれている(ので、附属書IIIと事実上同じ効果があるのかもしれない)。ナノ材料について言及されている箇所は2つで、明示的にナノと書かれているのはそのうちの1つ。それは前文(12)で唯一「ナノ」という言葉が出てくる箇所である。ここではナナノ材料の定義が「非常に小さいサイズあるいは内部構造や表面構造を持つすべての物質」であることが分かる。

科学的証拠が利用可能になり次第、予防原則を考慮して、非常に小さいサイズあるいは内部構造や表面構造を持つすべての物質(ナノ材料)を含む、他の有害物質の制限と、少なくとも同じレベルの消費者保護を保証するより環境にやさしい代替物へのそれらの代替が検討されるべきである。

そしてもう1つの箇所が、本文の第6a条「附属書IVの制限物質の見直しと改正」の部分。まず、改正RoHS指令が施行されて3年以内に欧州委員会は、附属書IVの制限物質リストの徹底的な評価に基づいた見直しと改正を検討しなければならないと書かれている。またそれ以降も定期的に欧州委員会自らのイニシャティブで、また、メンバー国からの提案によって、見直しを実施すべきとされている。見直しと改正は、欧州の他の法規制、特にREACH規制(附属書XIVとXVII)と整合的であるべきとの指摘もある。それ以降の文章を引用する。ここには、前文(7)にあったような「(ナノ材料)」というカッコ書きはなく、「非常に小さい(very small)」という言葉のみである。

附属書IVを見直し改正するために、欧州委員会は、非常に小さいサイズあるいは内部構造または表面構造を持つ物質や類似物質のグループを含む、ある物質が下記に該当するかどうかを特に考慮すべきである。
a) 廃棄電気電子機器(EEE)の再利用や廃棄EEEからの材料のリサイクルの準備を含む、EEEの廃棄物管理業務の間に負の影響が起きる可能性があるかどうか。
b) 現行の業務条件のもとで、廃棄EEEからの材料の再利用、リサイクリングや他の処理を準備する際に、物質の、環境中への制御されないあるいは拡散する放出を引き起こす可能性がある、あるいは、有害な残留物、あるいは変化・分解産物を生ずる可能性があるかどうか。
c) 廃棄EEEの収集や処理プロセスに従事する労働者への受け入れられない曝露につながる可能性があるかどうか。
d) 負の影響がより少ない代替物質や代替技術に取って代わる可能性があるかどうか。

また第2項には、制限物質リストを見直したり改正したりする提案を行う際に最低限必要な情報が列挙されている。提案側に(社会経済評価まで含めた)説明責任を課していることが分かる。

・正確で明確な提案の文言
・制限のための参照された科学的な証拠
・EEEにおける物質あるいは類似物質グループの使用についての情報
・特に廃棄EEE管理業務の間の有害な影響と曝露についての情報
・可能性のある代替物や他の選択肢、それらの利用可能性、信頼性についての情報
・最も適切な対策としてEU全域での制限を検討することの正当性
・社会経済的評価

 

最後に、全体の印象としては、REACH(化学物質の登録、評価、認可及び制限)規制との関係に言及した箇所がとても多いこと、また、予防原則(precautionary principle)という言葉が多く出てくることなどが挙げられる。