Nanosafety Web Site > 国際機関 > OECD WPMN > 2011年2月 経済協力開発機構(OECD)の工業ナノ材料作業部会(WPMN)についての基礎知識

2011年2月 経済協力開発機構(OECD)の工業ナノ材料作業部会(WPMN)についての基礎知識

<経緯>
2006年、OECDは、EHS(環境健康安全)プログラムのうち工業ナノ材料の安全性プログラムを実施する組織として工業ナノ材料作業部会(WPMN:Working Party on Manufactured Nanomaterials)を設置した。WPMNの本会合も、パリのOECD本部で2年に3回開催されている。第7回会合は2010年7月7日~9日に開催され、第8回会合は2011年3月16日~18日に、第9回会合は2011年11月30日~12月2日に開催予定である。現在、以下に示す8つのプロジェクト運営グループ(Steering Group: SG)が活動している(SG1とSG2は合同で実施)。

 

SG1&2 EHS研究活動の情報分析のための工業ナノ材料OECDデータベース(OECD Database on Manufactured Nanomaterials to Inform and Analyse EHS Research Activities)
SG3 工業ナノ材料の代表的セットの安全性試験→スポンサーシッププログラム(Safety Testing of Representative Set of Manufactured Nanomaterials)
SG4 工業ナノ材料とテストガイドライン(Manufactured Nanomaterials and Test Guidelines)
SG5 ボランタリー制度と規制プログラムに関する協力(Co-operation on Voluntary Schemes and Regulatory Programmes)
SG6 リスク評価に関する協力(Co-operation on Risk Assessment)
SG7 ナノ毒性学における代替試験法の役割(The Role of Alternative Test Methods in Nanotoxicology)
SG8 曝露計測と曝露抑制に関する協力(Co-operation on Exposure Measurement and Exposure Mitigation)
SG9 工業ナノ材料の環境上持続可能な利用(Environmentally Sustainable Use of Manufactured Nanomaterials)

 

<安全性試験スポンサーシッププログラム>
SG3による安全性試験スポンサーシッププログラムがこれまで最も活発に実施されてきたプログラムであり、代表的工業ナノ材料13(開始時の14から1増2減)について参加国がデータを持ち寄り、主スポンサー国が文書に取りまとめることになっている(表を参照)。非加盟国の中国と南アフリカも参加している。対象となるエンドポイント(試験項目)は、物理化学性状、環境中運命、生態毒性及び哺乳類毒性であり、大・中・小項目、必須・選択項目が入り乱れているので数え方にもよるが、全59項目あるということになっている。全項目についてデータを収集することにした特定のナノ材料を「主要(プリンシパル)材料」と呼んでいる。試験方法についてのガイダンスマニュアルと、試料調製と用量測定(ドジメトリ)についての予備的ガイダンスが発表されている。

日本は、フラーレン、単層CNT及び多層CNTの3材料について、米国と共同でリード・スポンサーになるとともに、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛及び二酸化ケイ素の5材料についても、代替試験法(具体的には、培養細胞を用いた試験法)のデータを提供するコントリビューターになっている。

 

  主スポンサー 共同スポンサー コントリビューター
フラーレン(C60 日本*   デンマーク
米国*   中国
単層CNT 日本*   カナダ
米国*   フランス
    ドイツ
    欧州委員会
    中国
    BIAC
多層CNT 日本* 韓国 カナダ
米国* BIAC フランス
    ドイツ
    欧州委員会
    中国
    BIAC
銀ナノ粒子 韓国 オーストラリア フランス
米国 カナダ オランダ
  ドイツ 欧州委員会
  北欧閣僚理事会 中国
    BIAC
鉄ナノ粒子 中国 BIAC カナダ
    米国
    北欧閣僚理事会
二酸化チタン フランス オーストリア デンマーク
ドイツ カナダ 日本**
  韓国 英国
  スペイン 中国
  米国*  
  欧州委員会  
  BIAC  
酸化アルミニウム     ドイツ
    日本**
    米国
酸化セリウム 米国* オーストラリア デンマーク
英国/BIAC オランダ ドイツ
  スペイン 日本**
    スイス
    欧州委員会
酸化亜鉛 英国/BIAC オーストラリア カナダ
  米国 デンマーク
  BIAC ドイツ
    日本**
    オランダ
    スペイン
    欧州委員会
二酸化ケイ素 フランス ベルギー デンマーク
欧州委員会 韓国 日本**
  BIAC  
デンドリマー   スペイン オーストリア
  米国* 韓国
ナノクレイ BIAC   デンマーク
    米国
    欧州委員会
金ナノ粒子
(2101年7月追加)
南アフリカ 韓国 欧州委員会
  米国  
  BIAC:経済産業諮問委員会
  *:代替試験方法も実施
  **:代替試験方法だけを実施

 

2011年1月に次期(フェーズⅡ)スポンサーシッププログラムのあり方についての本格的な議論が始まった。2011年11月の第9回WPMN会合では、今期(フェーズⅠ)スポンサーシッププログラムの総括をすることになっている。WPMNは、化学物質管理法令に基づく工業ナノ材料の評価のために、現行のOECDテストガイドラインへの追加や修正が必要かというのが主要な問題意識である。

<その他のSGの活動概要>
SG1&2で開発したナノ安全研究データベース「工業ナノ材料の安全性に関する研究データベース」が2009年4月に一般に公開されている。

SG4は、スポンサーシッププログラムの主スポンサーを対象に、スポンサーシッププログラムにおけるOECDテストガイドラインの使用経験に関するアンケート調査を行った(2010年10月末まで)。

SG5は、定期的に各国政府のナノ管理法制の整備動向やナノ情報収集制度の経験などをアンケート調査している。現在、WPMN第8回会合に向けて、最新の調査結果を分析した報告書案について参加国のコメントを求めている。

SG6は、カナダとドイツがリードして2008年から「工業ナノ材料のリスク評価に関するj報告書―重要な論点」という文書の開発を進めてきた。今後、WPMN第8回会合に最終案を提出し、2011年夏の一般公開を目指すのではないかと思われる。

SG7は、5つのナノ材料、すなわち、二酸化チタン(Aeroxide P25)、多層CNT(Nanocyl NC7000とArkema Graphistrenght C100)、酸化亜鉛(Z-COTEとZ-COTE HP1)を対象とするケーススタディを実施するとともに、ガイダンス文書「詳細な分散プロトコール」の作成を目指している。この一環として、2011年1月18日~20日にパリOECD本部で専門家協議会合を開催した。

SG8は、今後取り組むべき50弱の曝露計測・低減プロジェクト項目の優先順位付け、新規プロジェクトの追加、リード国引受け意向について、加盟国にアンケートを実施した(2010年11月19日まで)。すでにオーストラリアと米国が提案を行っている。SG8からは、「ラボにおけるナノ材料への曝露に関するガイドラインの集約・比較」が2010年に発表されている。

SG9は、2007年に科学技術政策委員会(CSTP)の下に設置したナノテクノロジー作業部会(WPN: Working Party on Nanotechnology)と連携しつつ、ナノテクの環境応用による便益に着目して活動している。