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2015年9月 複層カーボンナノチューブ(MWNT-7)を対象としたがん原性指針策定について(速報)

8月31日、経済産業省別館において厚生労働省「第2回 化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」(検討会)が開催され、「化学物質による健康障害を防止するための指針」(がん原性指針)に新しく追加されることが決まっている3化学物質について議論された。3化学物質のうちの一つが複層カーボンナノチューブ(MWNT-7)である。

検討会においては、複層カーボンナノチューブ MWNT-7はすでに製造を中止されているが、在庫品が全くない訳ではないので、注意喚起の観点からがん原性指針に掲載して公表することが改めて確認された。指針の対象となる物質について、「複層カーボンナノチューブ(MWNT-7)」とされ、但し書きで、「製造事業者により当該製品の名称がNT-7、NT-7Kに変更されたため、これら変更後の名称の製品も含む。」と記された。もう一つ注目すべきことは、通常がん原性指針で化学物質名と併記されるCAS番号を、このMWNT-7に限り掲載しないとされたことである。
当初、がん原性指針にはMWNT-7にCAS番号308068-56-6が併記されることになっていた。今回の検討会において、例外的にCAS番号ががん原性指針に記載されない背景には、MWNT-7のCAS番号を巡る以下のような混乱した状況がある。米国の有害物質規制法(TSCA)や欧州の化学物質の登録、評価、認可及び制限に関する規則(REACH)などの化学物質管理のためのインベントリでは、様々なカーボンナノチューブが元素としての「炭素」のCAS番号7440-44-0やグラファイトのCAS番号7782-42-5で管理されてきた。またCAS番号がついていなかったり、営業秘密情報(CBI)として非公開のものも多かった。
このような状況に対応するために、フラーレンまで含めて、カーボンナノチューブにCAS番号308068-56-6が自動的に割り振られる慣行があった。このような状況を正しく把握できないまま、自社のカーボンナノチューブのCAS番号として308068-56-6を受け入れている製造企業もあった。確かに一般的にナノ炭素を一つのCAS番号で包括できるのだが、単層なのか多層なのかさえ問わず、フラーレンまで包含してしまうこのCAS番号が、今回のがん原性指針の対象であるMWNT-7を代表するものではないことは明らかである。このような状況で、従来の慣行に従って「MWNT-7(CAS番号308068-56-6)相当のもの」といった表現でがん原性指針に掲載されると、ナノ炭素材料すべてに発がん性があるということになってしまう。
例年その年のがん原性指針は10月に公表される。厚生労働省は、様々な情報を精査したうえで、「MWNT-7相当のもの」あるいは「MWNT-7に代表されるようなもの」という表現は、指針の対象物質の説明とするには適当ではないと判断したものと思われる。
今後、検討会では、「指針対象物質の作業環境測定の方法(案)」および「使用すべき保護具(案)」について、内容を詰める予定である。作業環境測定の方法として、炭素分析法と高速液体クロマトグラフ分析方法が提案されている。また、使用すべき保護具については平成21年3月31日付基発第0331013号「ナノマテリアルに対するばく露防止等のための予防的対応について」に沿った対応が提案されている。
(文責:関谷瑞木)