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2011年1月 米国EPAによるTSCAを使ったCNT規制の現状

<ポイント>
米国環境保護庁(EPA)は2010年9月17日付の官報において、2種類のカーボンナノチューブ(CNT)のSNUR(重要新規用途規則)の最終ルールを公布した。対象は、PMN P-08-177(多層CNT)とPMN P-08-328(単層CNT)と書かれているが、これは英国のThomas Swan社がEPAに届け出た単層CNTと多層CNT(商標名 “Elicvarb”)である。

2011年初頭段階のEPAによる有害物質規制法(TSCA)に基づくCNTの規制は、現在、2種類の特定のCNT、すなわち上記のPMN P-08-177(Thomas Swan社の多層CNT)とPMN P-08-328(Thomas Swan社の単層CNT)に対してのみSNURという形で公布されている。

ただ、米国内でまとまった量のCNTを販売しようとすれば、新規化学物質として届け出て、同意指令を受け取り、最終的にSNURが発行されることになるので、事実上、すべてのCNTに対して規制がかけられたことと捉えることも可能である。

<背景>
EPAは2008年10月31日の官報通知においてCNTは、グラファイトをはじめとする炭素の既存の同素体とは異なる化学物質であり、TSCAのSec.5における新規化学物質に該当し、TSCAインベントリに掲載されていないCNTを製造・輸入する者は製造前届出(PMN)を提出しなければならないことを明言した。また、上記最終ルールにおいて「「異なる製造業者や異なるプロセスで製造されるCNTは、TSCAのもとでの新規物質報告の目的にとっては、異なる化学物質であると考えられるだろうとEPAは認識している。この決定はケースバイケースで行うつもりである」と書かれている。

TSCAにおいては、商業目的で年間10トン以上の新規化学物質を米国において製造または輸入する企業は、製造または輸入の開始の90日以内にEPAに製造前届出(PMN)を提出する必要がある。EPAのウェブサイトから見ることができる。PMNを受け取ったEPAは簡易なリスク評価を実施したうえで、一定以上のリスク(unreasonable risk)を与えるおそれがあると判断されれば、EPAからはTSCA sec.5(e)に基づき、同意指令(consent order)が出される。この同意指令はPMN申請者に対して出されるが、通常は当該化学物質を取り扱う全事業者に適用できるようにその後SNURという規制になる。ところが、CNTの場合、EPAが現在、PMNの申請1件ごとに「1つの化学物質」として扱っているために、同意指令とSNURの対象はともに特定のCNTなので両者の違いが不明確となる。ここが最もややこしい点だ。

<規制内容>
同意指令の内容は物質ごとに異なる可能性があるので一般化はできないが、有害性評価に関する内容はおそらく次のようなものだと思われる。サンプルの提供はToxCastに用いるためであることが分かっている。これらに加えてリスク管理上の要求も書かれている。

・当該物質のサンプルを1グラムにMSDSの写しを付けてEPAに提出
・当該物質の一定の特性評価データをEPAに提出
・曝露後3か月の観察期間伴う、ラットを用いた90日間吸入試験(気管支肺胞洗浄液(BALF)分析も含む)の結果をEPAに提出

<展望>
EPAはsection 4(a)の試験ルール(化学物質の製造業者と加工業者に,当該化学物質の健康や環境への影響に関する新しい試験データを取得するように要求する条項)を用いることが予想されている。このルールの発動条件の1つは、当該物質がそのライフサイクルを通して「不合理なリスク」を与えることが求められている。また、TSCAのsection 8(a)を使って、これまで実施されてきた自発的な情報提供プログラム(NMSP)を強制的なデータ収集ルールとすることも予想されている。