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2013年5月 米国EPAが機能性多層カーボンナノチューブに重要新規利用規則の直接最終規則を公布

米国環境保護庁(EPA)は、2013年5月9日付けの官報で、有害物質規制法(TSCA)に基づき、製造前届出(PMNs、TSCA第5(a)(1)(A)項に規定)が提出された15の化学物質に対して10件の重要新規利用規則(SNURs、TSCA第5(a)(2)項に規定)の直接最終規則(注釈参照)を提示した(リンク)。この規則公布の背景にあるPMN等の関連文書は、ドケット番号EPA–HQ–OPPT–2013–0100で閲覧できる(リンク)。

この規則は、反対表明がなければ、2013年7月8日に発効する。反対表明の期限は、2013年6月10日である。規則が発効すると、規則に定める「重要新規利用」のために当該物質を製造・輸入・加工する意図のある者は、少なくともその90日前までにEPAに重要新規利用届出(SNUN、TASC第5(a)(1)(B)項に規定)を提出しなくてはならない。

この15のPMN物質には、ナノスケール物質1物質が含まれており、そのSNURの概要は以下のとおりである。なお、対象物質についての説明の中で、ナノチューブの命名・識別方法の問題についても触れている。さらに、有害性試験データの説明では、ナノスケール物質の物理化学特性の評価や材料特性評価試験の際にOECDスポンサーシッププログラムのためのガイダンスマニュアルを参考にすべきとしている。

 

PNM番号P-12-44 機能性多層カーボンナノチューブ(functionalized MWCNT)

・規則公布の理由:PMN記載の当該物質の一般的利用は、ゴムや電池の添加剤である。類似物質の情報から暴露作業者の肺影響が懸念されるが、PMN記載の製造・加工・利用からは作業者の重大な吸入暴露は予見できない。CNT類は環境に放出されれば一部分は水に縣濁すると予見でき、CNT類は100 ppb以上の濃度で魚に亜致死性の影響をもたらしているが、PMNの記述からは環境放出は予見できない(このため、TSCA第5(e)項に基づく同意指令は発出していない)。PMN記載の製造・加工・利用方法であれば、非合理的リスクをもたらすとはいえないが、PMN記載以外の利用、粉末での製造・加工・利用、地表水への放出につながる利用については、重大な健康影響・環境影響をもたらすかもしれない。

・推奨される試験:

(1) ラットによる90日間吸入毒性試験と最長3か月の事後観察期間、気管支肺胞洗浄液(BALF)分析、粒子径分布の情報やその他の毒性学的に関連のある特性、肺・肺外の器官・組織(心血管、中枢神経系、肝臓、腎臓等)の組織病理学的検査、肺沈着(肺負荷)、クリアランス半減期(生体残留性)と試験物質の移行、及び心血管毒性の決定

(2) 走査透過電子顕微鏡(STEM)、透過電子顕微鏡(TEM)又は走査電子顕微鏡(SEM)観察による層数(範囲と平均)、管端(開、冠、丸、他)、管幅・径(内・外径又は範囲)、管長(範囲)、管の欠陥(出っ張り、枝分かれ、欠け等)の記述

(3) 管表面に見られる官能基のパーセント(範囲)(定量方法を含む)

(4) 質量や体積ではなく個数による粒子径分布(STEMの使用が望ましい)

 

【参考:PMNの記述から推定できること】このPMN物質は、米国テキサス州オースチン所在のMolecular Rebar Design, LLC (MRD)社(リンク)の製品であろう。同社ウェブサイトの記述によれば、他社から購入したMWCNTを改質して分散性・材料親和性を向上させたものである。PMNの直接前駆物質の欄に「PMN-P-09-257.PDF」の文字列があることから、PMN番号P-09-257のCnano Corporation社の輸入MWCNTを原料にしているものであろう。このMWCNTについては、2013年2月25日付けでSNURが提案されていた(リンク)。

 

【注釈:直接最終規則とは】SNURは通常の規制制定手続きに沿って進められる。通常は、提案ルール(proposed rule)を発表し、パブコメとOMBの審査を経て、最終ルール(final rule)となる。直接最終ルール(direct final rule)とは提案ルールを経ないでいきなり最終ルールとするものであるが、その代わりに1か月以内に反論(あるいはその提出意図)があると撤回しなければならない。