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2015年6月 米国EPAがグラフェンに重要新規利用規則の直接最終規則を提示

米国環境保護庁(EPA)は、2015年6月5日付けの官報で、有害物質規制法(TSCA)に基づき、製造前届出(PMNs、TSCA第5(a)(1)(A)項に規定)が提出された22の化学物質に対して20件の重要新規利用規則(SNURs、TSCA第5(a)(2)項に規定)の直接最終規則(末尾注釈を参照)を提示した(リンク)。

この規則公布の背景にあるPMN、同意指令(Consent Order)、評価書等の関連文書は、ドケット番号EPA/HQ/OPPT/2015/0220で閲覧できる。

この規則は、反対表明がなければ、2015年8月4日に発効する。反対表明の期限は、2015年7月6日である。規則が発効すると、規則に定める「重要新規利用」のために当該物質を製造・輸入・加工する意図のある者は、少なくともその90日前までにEPAに重要新規利用届出(SNUN、TASC第5(a)(1) (B)項に規定)を提出しなくてはならない。

この22のPMN物質には、PMN番号P-14-763「グラフェンのナノプレートレット(ナノ小片)」が含まれており、そのSNURの概要は、以下のとおりである。当該PMN物質に対しては、TSCA第5(e)(1)(A) (i)項及び第5(e)(1)(A)(ii)(I)項に基づく「リスク・ベースの」同意指令が2014年12月30日に発効している。

●PMN番号P-14-763 グラフェン・ナノプレートレットであって、大部分の厚みが1~10層、辺の長さが大方が2ミクロン未満であるもの

  • CAS番号 利用不可
  • TSCA第5(e)項に基づく同意指令が2014年12月30日に発効
  • 同意指令発出の理由:PMN記載の一般的な(秘匿されていない)用途は、プリンテッド・エレクトロニクス、太陽光発電、分離、機能性複合材料である。吸入性不溶性粒子状物質と類似炭素系ナノ材料の試験データの構造活性相関分析の結果から、EPAは、肺毒性、催腫瘍性、免疫毒性、線維化、過負荷による肺毒性の懸念を見出した。当該物質が不合理な障害リスクを環境やヒト健康に与え、かつ、重大なヒト暴露があるかもしれないという発見から、TSCA第5(e)(1)(A)(i)項及び第5(e)(1)(A)(ii)(I)項に基づき同意指令が発出された。
  • 上記リスク及び暴露から保護するための同意指令の要求事項:
  1. 個人保護具の使用。不透過性手袋と保護衣(経皮暴露の可能性があるとき)、NIOSH認証の呼吸器具(吸入暴露の可能性があるとき)。
  2. ハザードコミュニケーション対策の確立と利用。例:各表示やMSDSに、ヒト健康・環境ハザードを予防するための記述。
  3. 同意指令に規定の製造・加工・使用に限定。
  4. 蒸気、ミスト又はエアロゾルを発生させる使用方法で使用しないこと。
  5. 同意指令に規定の秘密の製造量限度を超える前に特定の毒性データを提出すること。
  6. 製造・加工・使用から合衆国の水系への予見できる又は意図的な放出がないこと。
  • この規則は、これら(1~6)の保護措置がとられない場合を「重要新規利用」に指定。
  • 推奨される試験:特定の、粒子径分布及び材料特性評価試験の結果が必要。会社は、同意指令の試験の項に記述のフルの化学特性評価試験を同意指令に規定の時間的枠組み内に提出することに同意している。さらに、特性評価試験の結果次第で、同意指令に詳細に規定された秘密の累計製造量において、追加的な毒性試験データが要求されるかもしれない。

【関連文書】

ドケットEPA/HQ/OPPT/2015/0220には、当該PMN物質の関連文書2点が収録されている。ただし、秘密情報は秘匿されている。「Formdata sanitized P14-0763」(EPA-HQ-OPPT-2015-0220-0016)は、PMNである。これによれば、PMN提出者はスワンケミカル社(英国のトーマス・スワン社の米国子会社、CNTに対する最初のSNURで有名)、商品名はElicarb Graphene Powder及びDispersionである。「Support Documents for P14-0763」(EPA-HQ-OPPT-2015-0220-0038)は、EPA作成の評価書とSNURの元になった同意指令である。同意指令のTestingの項(pdfの40/70~48/70)には、漸進的な試験計画(果ては、2年間吸入暴露試験)の規定がある。秘匿された製造量限度を超える前に要求される毒性試験は、CNTと同じ90日間吸入暴露+3か月観察である。

【注釈:直接最終規則とは】

SNURは、通常であれば、まず、提案規則(proposed rule)を発表し、パブコメと行政管理予算局(OMB)の審査を経て、最終規則(final rule)となる。直接最終規則(direct final rule)とは、提案規則を経ずにいきなり最終規則とするものであるが、その代わりに、もし、1か月以内に反論の提出(又はその提出意図表明)があると、撤回しなければならない。

(文責 五十嵐卓也)