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2012年4月 米国FDAがナノテクノロジーを利用した食品と化粧品の安全性を評価するための手引き案を発表

米国食品医薬品局(FDA)は2012年4月、ナノテクノロジーを使った食品と化粧品に関する安全性評価のための手引き案を発表した。食品の方は、製造プロセス変更に関するもので、「産業界のための手引き(草稿):新興技術を含む重要な製造工程変更が、着色料を含む食品成分と食品接触物質の安全性と規制の現状に与える影響の評価」という長いタイトルのものである。化粧品についてのもののタイトルは「産業界のための手引き(草稿):化粧品製品中のナノマテリアルの安全性」である。両者ともに、最終案になっても法的拘束力を持つものではなく、あくまで「手引き」である。パブリックコメント期間は90日間となっている。

 

食品に関する手引き案

食品に関する手引き案は、(既存食品の)食品製造プロセスの大きな変更が対象で、そのことが食品成分の特性、安全性、該当する法規制、許認可の必要性などに影響を与えるかどうか検討する際に考慮すべきファクターを説明するものである。製造技術の「大きな変更」の一例として挙げられているのが「ナノテクノロジー」で、成分の粒径分布をナノスケールに変更することがこれに該当する可能性がある。「ナノメーター」は「1ナノメーターからマイクロメーターの間の粒径」定義されており、これは2011年6月に発表された手引き案によるものを採用している。本手引書案は第Ⅰ節でイントロ、第Ⅱ節で規制枠組み、第Ⅲ節で食品成分の安全性評価についてまとめられ、第Ⅳ節のディスカッション部分で、安全性評価における検討事項と勧告が述べられている。

 

[勧告部分を和訳したpdfファイルへのリンク]

 

勧告は4つの部分からなりそれぞれの対象が、1つ目は連邦規則集(CFR)21における食品添加物と着色添加物規制、2つ目はCFR 21におけるGRAS認証、3つ目が食品接触物質の届出、4つ目がGRAS自己認証、である。伝統的に利用されている食材や研究者によって調査された物質との同等性を示す責任は製造業者にあるとされる。また、食品接触物質の場合は、ナノスケールになると特性や不純物などに大きな変化を起こす可能性があり、新規の届出を行うことが推奨される。GRASとは、Generally Recognized As Safeの略で一般的に安全と認められる食品のことで、その要件は「安全性に関する技術的な証拠」と「一般的な安全性の認識」の2つからなる(着色添加物にはGRAS規程は適用されない)。ナノテクノロジーの食品応用については両者ともに疑問が投げかけられているのが現状であり、GRAS要件を満たしておらず、FDAによる上市前審査と承認をケースバイケースで必要とする可能性が高いと書かれている。
これまで、食品添加物や着色添加物において、ナノマテリアルを用いていることを明記した、届出やGRAS認証は存在しないそうだ(食品接触物質ではナノマテリアルの使用を明記した届出がすでにあるようだ)。

化粧品に関する手引き案

化粧品に関する手引き案は、2007年に発表されたナノテクノロジータスクフォースの報告書や、その後開催された公聴会での議論に基づいている。米国では、化粧品の規制に関する法律である、連邦食品医薬品化粧品法(FD&D法)は、化粧品やその成分については、着色添加物を除くと、FDAの上市前承認を義務付けてはいないが、化粧品の安全性を確保する責任は製造業者や流通業者にあるとしている。この手引書案では、化粧品中のナノマテリアルの安全性を評価するたに考慮すべきポイントを挙げている。有害性評価においては、ナノマテリアルを溶解性と不溶性に分けて論じられ、リスク評価は、溶解性の成分については重量ベースで問題ないが、不溶性の成分については、数や表面積やそれらの分布といった他の指標も必要になるかもしれないことが指摘されている。また、ICCVANやECVAMによる妥当性の検証が行われたin vitro試験法、すなわち代替試験法についても紹介され、下記の5種類が挙げられている。

  1. 皮膚刺激性や腐食試験のためのEpiskinTMやEpidermTMといった再構築されたヒトの皮膚
  2. 紫外線(UV)吸収物質に適用可能な3T3 NRPTを介した光毒性試験(3T3線維芽細胞ニュートラルレッド取り込み光毒性試験)
  3. 皮膚吸収のための拡散細胞におけるヒト/ブタ皮膚
  4. 眼球刺激のための、牛摘出角膜を用いた眼刺激性試験代替法(BCOP法)とニワトリ摘出眼球を用いた眼刺激性試験法(ICE法)
  5. 3つの推奨される試験法のバッテリーを用いた遺伝毒性試験:細菌を用いた復帰突然変異試験、in vitro哺乳動物細胞遺伝子変異試験あるいはin vitro哺乳動物染色体異常試験、in vitro小核試験
安全性評価において、考慮すべき重要なファクターとして勧告されている項目は以下のとおりである。
  • 物理化学的特性
  • 最終製品のものに対応した毒性試験条件下でのナノマテリアルの凝集状態と粒径分布
  • 不純物
  • 潜在的な製品曝露レベルと、最終製品中でのナノ粒子の凝集可能性
  • in vitroとin vivo試験のための用量設定
  • 化粧品成分とそれらの不純物に関するin vitroとin vivoの毒性データ、皮膚浸透、刺激性(皮膚と目)、感作性研究、突然変異性/遺伝毒性研究
  • 化粧品成分や最終製品を、ヒトボランティアに対して制御された条件下で試験する臨床試験