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2010年12月 米国NIOSHのCNT/CNFの推奨暴露限度(REL)提案文書

<RELの値>
米国労働安全衛生研究所(NIOSH)は2010年12月に、最新情報広報(CIB)「カーボンナノチューブとカーボンナノファイバーの職業曝露(草稿)」をリリースし、パブリックコンサルテーションにかけられ、2月18日に締め切られた。2月3日には招待者のみの公聴会も開催されたようだ。全文の和訳はここを参照してください。

本文書は、1年前から「もうすぐ出る」と噂されていたもので、単層と多層、あるいは製造者ごとに多様なカーボンナノチューブ(CNT)について単一の推奨曝露限度(REL)を提案することは可能なんだろうかという疑問があった。驚くべきことに今回は、CNTに加え、カーボンナノファイバー(CNF)もまとめて1つのRELが提案された。そのからくりは、RELを動物試験ではなく計測手法の定量限界によって決めるという裏ワザを使ったことにある。2種類の多層CNT(Bayer社のBaytubeとNanocyl社のNC7000)の亜慢性吸入試験データを用いたベンチマーク用量法によって導出された(本来はそれらの試料のRELとなるべき)ヒトの生涯労働時間の気中濃度で表したベンチマーク濃度(10%過剰リスクを生じる用量)の95%信頼下限値(BMCL)が0.19~1.9μg/m3となり、これらの数字がNIOSHの開発した「NIOSHメソッド5040」という計測手法の定量限界(LOQ)の上限値である7μg/m3を下回ったために、後者の7μg/m3をRELとした。

パブリックコメントを受けて、最終版がいつ発表されるかは予想が難しい。2005年に発表されたナノスケール二酸化チタンのCIBドラフトは5年経ってもまだ最終版は出ていない。

<RELの性格>
ここで確認しておく必要があるのは、RELの性格である。米国の作業環境基準値としては、実質的に使われているのは米国産業衛生専門家会議(ACGIH)の許容濃度である。公的機関から出ている数字には、米国労働安全衛生庁(OSHA)が作る法的拘束力があるPEL(許容曝露限度)と、米国NIOSHが作成する法的拘束力のないRELがある。そういう意味で、RELは法的拘束力がないうえに、事業者はACGIHの許容濃度で管理しているために本来はあまり影響力のない数字である。ただ、世界で初めて公的機関がCNT/CNFについて提案した具体的な許容曝露濃度であるという意味で、その導出方法やロジックなどがデファクトスタンダード(事実上の標準)となりうるという意味において重要であるといえる。
<BMCL導出方法>
CNTおよびCNFを用いた動物試験(気管内投与、咽頭吸引、吸入曝露)として、気管内投与が2報、咽頭吸引が2報、吸入曝露が4報選定され、最終的にBMCLの導出には2報の亜慢性吸入試験(Ma-Hock et al. 2009Pauluhn 2010)が用いられた。評価エンドポイントは、前者が肉芽腫性炎症(最小かそれ以上)、後者が局所性中隔肥厚(最小かそれ以上)である。BMCLを導出する際の用量尺度には「肺沈着量」と「肺保持量」が用いられた。肺沈着量は、気管内投与や咽頭吸引の場合は投与したCNTの質量用量と等しいとみなすが、吸入曝露の場合は次の式で推計される。

肺沈着量(μg)=曝露濃度(μg/m3)×期間(時間/日×日/週×週)×分時換気(L/分)×0.001m3/L×60分/時間×肺胞沈着率

肺保持量は、吸入曝露試験についてのみ計算され、13週間の吸入曝露後の肺負荷量として推定されている。計算にはクリアランスを加味してMPPD2.0モデルを用いて計算された。その結果、BMCL が、Baytubeについて、0.38~1.9μg/m3、NC7000について、0.19~1.0μg/m3となった。